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PHP ASSIST 2007 Vol.8

営業現場の変化と営業社員の役割
松下電器の家電商品を量販店向けに販売することを目的に1997年に設立された同社では、営業社員(以下FA:フィールドアドバイザーの略)と上司であるリーダーに対してコーチング研修を行っている。営業現場の変化に伴い、FAの役割はどのように変わったのか?また変化が激しい現場のなかで、コーチングをどう活かしているのか?推進役の江口氏とFAの田中氏に話を聞いた。

“マンスリーからウイークリー” “現場への直行直帰”の営業スタイルへの変化

コーチング研修を導入した経緯について教えてください。
江口
背景としては、国内家電販売環境の変化と松下グループの構造改革に伴い、2000年から01年ころに当社の組織の仕組みと活動が大きく変わったことがあげられます。従来のタテ型組織がヨコ型組織となり、モノを卸す卸機能主体の活動から、店頭にてお客さまにお買い上げいただくための小売支援が中心の活動になったということです。そのためFAの活動サイクルはマンスリーからウイークリーに、そして1週間に1日会社に行く以外は量販店店頭へ“直行直帰”する営業スタイルに変わりました。
そのような変化にともない過去の営業スキルでは対応できなくなり、リーダーのマネジメントの刷新が急務の課題となりました。組織の仕組みと仕事の変化に対応できる人材の育成が目標達成の条件となり、そのためにリーダーのコミュニケーションスタイルの双方向化、FAの能力開発を目指してコーチングを導入しました。
また、評価にはコンピテンシー概念を取り入れたMBO(目標管理制度)を導入していますが、リーダーとの面談時にFA自らの目標が納得性のあるものとするためにもコーチングスキルは有効だと思います。目標設定、目標遂行、結果評価の3段階の面談において、コーチングを用いたコミュニケーションをリーダーと FA間で取ってもらうことで“学習する組織”に向かっていけばいいと考えています。研修は、2002年からFAの上司にあたるリーダーに、FAには 2003年から全員に受講してもらい、現在も継続中です。
いまお話に出てきた、FAの仕事について教えてください。
  また、田中さんは営業現場でどのような変化を感じられたのでしょうか?
田中
FAの仕事は、お得意先(量販店)店頭にてお客さまに商品の価値を理解していただき買っていただく支援をすることです。具体的には、お得意先社員の方に商品の勉強をしていただく機会をつくったり、また、調理器具であれば試食イベントを催すことでお客さまに商品を体感してもらったりすることなどです。
土日の店頭でのイベントに合わせて、金曜日までにいかに仕事を組み立てるかがお得意先とFAの共通認識となっているために、目標は共有しやすいです。以前は本部担当から新製品情報などが流れてきたのですが、いまは店頭からいただいた情報を生産サイドへ流し商品開発の参考にしてもらっています。最終ユーザーに対してお得意先を通じてどう役立つのかを考え、お得意先と一緒になって売っていく小売支援に変わったことは営業スタイルを一新する変化でした。
江口
国内家電市場には97年以降全国の大型量販店の攻勢、カメラ業界も参入し、価格戦略をベースに大型店舗を全国展開する法人が主流になるという業界の再編成がありました。メーカーのマーケティング戦略が通用しなくなり、現場で感じる「お客さま(最終ユーザー)は何を求め、何に喜んでくれるのか」という情報をもとにしたスピーディーな商品づくりが必要になりました。つまりお客さまが求めているものをしっかり聴き、その声を集め、素早くメーカーにフィードバックしてモノづくりに活かすことが営業の仕事になったのです。その意味でも、コーチングスキルはとても活きてくるのです。

頭でわかったつもりでも身体が動かなければ理解しているとは言えない

コーチング研修を受けて、どう感じましたか?
田中
初めて受講したとき、「こんなやる気の出るやり方があったのか!素晴らしいスキルだ」と思いました。先ほどのような現場での変化とともに、チーム内でも SA(セールスアシスタント)を育てなければいけません。単純作業が多くなりがちな彼らのモチベーションの高め方を勉強するうえでとても“いいもの”を得たと思っています。
いままで、“答えを言う、アドバイスをする”のが上司・先輩の仕事だと思っていたので、相手を“承認し”話を“聴いて”いくことで、“自分で答えを出すことを導いてあげる”という考え方は新鮮であり、コーチングを勉強しているFA・SAが見違えるほど成長していることを実感したのは驚きでした。また、後輩やSAのモチベーションを高くしておくと自分がへこみ「もうあかんわ」となったとき、「大丈夫ですよ、田中さん」と、逆に元気をもらうことがあり、そのときはとても嬉しいものです。
江口
FAは数人の関連スタッフと一緒に働いているので、まとめていくマネジメントが求められる仕事です。「これをやれ、あれをやれ」と仕事を押しつけるのではなく、「一緒にやってみようよ」という取り組みにコーチングが活きてくるのです。組織全体のムードを盛り上げていると思いますし、研修後のアンケートでは「奥さんや子供のかかわりもよくなった」と言う声がどんどん返ってきたのは嬉しいことでした。
コーチングの効果が出ているようですが、他の理由はありますか?
江口
経営が厳しかった当時、役員・支社長など経営幹部がコーチングを理解し、強い意志で導入の判断をしたことは大きいと思います。また、会社は「物をつくる前に人をつくる」ところであり、人は「ダイヤモンドの原石」で「無限の可能性を持っている」存在であるという松下幸之助創業者の人材に対する考え方が、コーチングの概念と“ぴたっ”とはまったのだと思います。研修でも、現場でも話題にできそうな松下幸之助のエピソードを盛り込んでもらうようにしています。
また、知識をつめこんで頭だけで分かっても身体が動かないようでは理解できているとは言えません。実際に使って初めてモノになるからです。だから、現場で活かせるようにロールプレイを多用し、セッションで相手とコミュニケーションをとるなかで、“感性”が刺激されるように研修メニューを組んでいるからではないでしょうか。

“自ら勉強するチーム”により超大型店に匹敵する販売台数達成!

ロールプレイに重きを置いた研修は、現場ではどのように活きているのでしょうか?
田中
例えば、お得意先の調理グループの若い方から「電子レンジが売れないのですが、どうしたらいいでしょう?」と相談を受けたことがありました。これ幸いと思いロールプレイでやったことを使ってみて「どうしたら売れると思いますか?」「なるほど、他には何かアイデアはありますか?」と聴いていったところ、「自分から機能を説明してしまうから売れないんです」という言葉を引き出すことができました。すると「お客さんが何を望んでいるか聴いたらいいんですよね。やってみます」と彼女。すかさず私も「いつからやるの?」と聞いたところ「今日からやります」と引き出すことができ、その後彼女は実績を上げることができて自信がついたそうです。
この他に、「自分で使わないからうまく説明できないんです」という言葉を担当者から引き出し、商品を実際に使用し、料理をして体験できる“ホームパーティ式研修会”の開催にこぎつけたこともあります。その担当店の調理グループは“自ら勉強するチーム”となり、4倍の販売力がある超大型店と同数の電子レンジが売れるという結果も得られたのは驚きでした。
江口
いま営業現場ではソリューション能力が求められ、お客様に対して「この商品で何を実現したいのか?」という問いかけが必要になっているのです。例えば、「予算2万円で炊飯器を買いたい」の声の裏にある本当の要望を聞き取るコミュニケーション力が大事だということです。お客さまが「本当においしいごはんが食べたい」と思っていて、「あと1万円だしたらもっとおいしくご飯が炊けるものがあります」とすすめたら「少し高かったけど、よそにはないおいしいご飯が食べられた」と後で感謝されるかもしれません。
田中の事例のように、コーチングし合うような関係・組織があちこちで見られるのは嬉しいことです。人は言われたことをやるより、自分が考えたことを実行するほうがモチベーションを高めることができるからです。

コーチングの本質は、“自らが変わることにより相手が変わる”こと

今後の展望をお聞かせ下さい。
田中
お得意先のなかに、社員だけでなく我々まで怒られることがあるくらい強烈な指示命令型の会社があります。業績は上がっているのですが、現場社員からは「もう限界です、しんどいですよ」という声を聞きます。そんな会社でコーチング的なコミュニケーションを取り、社員のモチベーションを高めることで売り上げが上がることを実証することによって、お得意先にもさらに活き活きとした会社になってもらいたいと考えています。そのためには、先ほどの電子レンジのような成功のケースを多くつくることで説得力を増していきたいですね。
ちなみに私は、車を使う仕事で週1回会社に行くだけのスタイルのため、上司や同僚と飲みに行く機会もなく通常ならコミュニケーション不足になると思いますが、リーダーのコーチングを用いたコミュニケーションに助けられ、メールであっても承認していただけるありがたさを肌で感じています。
江口
バブル崩壊後のリストラや成果主義による目標管理などで個人が疲弊するなか、企業と個人の結びつきをもっと強くすることが必要だと思っています。個人の幸せ・夢を企業がどうバックアップしていくのかを考えることが、「さすが松下やなあ」と言われることにつながると思うからです。急に伸びた会社が不祥事を起こす事例が世間をにぎわせていますが、しっかりとした経営理念を持ち、「何が正しいのか?」という問いかけを失わず、現場の社員1人ひとりが「正しいことをして自分の仕事に誇りを持てる」ことが大事なのではないでしょうか。
田中が言っているように、現場で“お得意先に対する自らのかかわり方を変えていくことで相手を変える”というコーチングの本質に、多くの社員に気づいてもらいたいですし、それが個人の幸せ、ひいては企業の利益に結びつくと考えています。

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